人の視野はすべてが同様な精度を持っているわけではなく、中心部分(中心窩,fovea)がもっとも精密に見ることができ、そこから周辺にいくほどだんだん精度が落ちていく。しかし、中心窩のまわりの領域も重要な役割を果たしており、例えば文章を読むときに中心窩の周りの領域である傍中心窩(parafovea)を隠すと、読むのに大きく支障が生じることが知られている。

一方で、傍中心窩でどのくらいの情報が処理されているのか、例えば単語の情報レベルでの情報が取得できているのかはわかっていない。本研究ではRIFTという新しい実験手法を用いてこれを調べたものである。

この手法は、被験者が注視している単語の次の単語を、60Hzという速い周波数で点滅させるという実験法である。同時にMEGによって脳計測をおこなうことで、ここでも同様に60Hzで振動する反応が見られれば、これが次の単語を処理している部位であると推定できる。次の単語は傍中心窩で見ているので、すなわちこれが傍中心窩の処理に対応すると言える。

RIFTの実験法。注視している次の単語の明るさを、60Hzという目に見えない速さで点滅させる。同時に脳をMEGという手法で計測し、同様に60Hzで振動する領域を見出すことで、関連領域を見出す。
実際の脳計測の結果。左の視覚野が主に反応していることがわかる。

ここでは傍中心窩が単語の意味の処理まで行っているか調べるために、使われる頻度が多い単語の場合と、少ない単語の場合で脳活動に差があるかを調べた。その結果、この2条件で反応に差があることがわかり、単語の情報を傍中心窩でも処理していることが見出された。

また、この傍中心窩での処理は文章を読む速度とも関係したとのことである。

Pan, Y., Frisson, S. & Jensen, O. Neural evidence for lexical parafoveal processing. Nat Commun 12, 5234 (2021). https://doi.org/10.1038/s41467-021-25571-x