金属表面に分子が吸着するときのエネルギーは、触媒の反応性と関連しうるために重要である。この計算法としては、理論的なアプローチがある。この場合には、多数の電子についてシュレディンガー方程式を解くことになり、その手法の一つとしてdバンド理論というものが広くもちいられている。ただし、これにもとづく定量的な予測には限界があるのだという。(理論の摂動的な性質ゆえ、とのことなので、摂動が大きくなると近似が成立しなくなる、ということなのかなと思います。)
一方最近では、機械学習を使って計算する、という手法も用いられるようになってきている。この問題点としては、学習データに対しての予測がうまく行っても、違うデータに対してうまく汎化されないということがある。また予測過程がブラックボックスなので、解釈することも困難となる。
そこで、本研究では機械学習の一つである深層学習と、dバンド理論を組み合わせることで、これらの問題を解決することを試みている。
結果として、機械学習だけの手法と同等の予測精度を保ちながら、結果の解釈も可能となり、さらにデータセットにない分子に対してもよく汎化することができたという。
Wang, SH., Pillai, H.S., Wang, S. et al. Infusing theory into deep learning for interpretable reactivity prediction.Nat Commun 12, 5288 (2021). https://doi.org/10.1038/s41467-021-25639-8