腱は血管新生が起こりにくいために自分で再生せず、大きく損傷した場合には自分の他の部分の腱を移植するしかない。ただしその場合には再手術が必要になったり筋力が低下したりすることが多い。
本研究はそこでiPS細胞由来の腱細胞を移植する方法を提案している。腱細胞を作るためには、通常の発達過程のように順を追って細胞を変化させていく。iPS細胞に適切な物質を順に作用させていくことで、各発達の段階に対応する細胞に分化していき、19日ほどかけて最終的に腱に相当する細胞へと変化していく。
iPS細胞から変化していることは、細胞内で転写されたmRNAを見ることでも確認している。
このようにして作られた腱細胞を、アキレス腱を断裂したラットに使うことで運動機能が確かに回復することを確認しており、これからの治療の選択肢になるかもしれない。
Nakajima, T., Nakahata, A., Yamada, N. et al. Grafting of iPS cell-derived tenocytes promotes motor function recovery after Achilles tendon rupture. Nat Commun 12, 5012 (2021). https://doi.org/10.1038/s41467-021-25328-6